「藤谷!!」

まるで悲鳴の様な声が俺の口から洩れ、慌てて藤谷を抱き起こす。

「……よかった。……間に合った」

そう言って藤谷は笑うが、その笑みにどうしようもない不安を覚えた。

抱き起こした藤谷の身体からは、留まる事無く温かな血が流れ出している。

そしてそれは雪村と同じ様に、もう彼が助からない残酷な事実を、俺に突き付けている様に感じた。

「……ごめんね。アイツ……すっごくしつこくて……雪村のカード……アイツの注意を引くのに……使っちゃった」

「カードなんてどうでもいい。それよりお前の傷……」

そう言って藤谷の傷を確認しようと手を伸ばすが、それを藤谷は掴み、そして真っ直ぐに俺を見つめた。

「聞いて……千尋ちゃん」

それだけ言って藤谷は着ているTシャツの袖を捲り上げる。

すると露わになった藤谷の左肩には……黒い文字が見えた。

「……ジョーカー?」

彼の肩に刻まれた《Joker》の文字を読み上げると、藤谷はそれに答える様に小さく頷く。