「……動くな」

低く、そして鋭い男の声と共に、喉元に冷たい何かが触れる。

その感触にビクリと身を竦め、そして小さく息を呑んだ。

それは……小さなナイフだった。

刃渡りは十センチほどの、どこにでも売っている様なナイフ。

しかしそのナイフは俺の喉元に突き付けられ、少しでも動けば俺の皮膚を切り裂きそうになっている。

バクバクと心臓が鼓動を打ち、それは俺に只ならぬ危険を必死に訴える。

呼吸が荒くなり何も言葉を発せないまま、ただ身を強張らせ立ち尽くした。