「お、お邪魔します」

そう小さく呟いて、開かれた扉を恐る恐るくぐり抜けると、その後ろを霧島さんが慌ててついてくる。

そんな気を張った俺達の行動に須藤さんは困った様に笑うと、そのまま部屋の奥へと歩いて行く。

ここは……小さなビルの二階。

恐らく企業ビルだと思うその部屋には……何も置かれていなかった。

灰色の壁と床が広がるだけの、何もない空間。

須藤さんの話曰く、他のビルの中もこんな感じらしい。

商業テナントにも商品どころか棚すら置かれていないので、食料などを手に入れる事は出来ないそうだ。

そっと窓から外を見れば、さっきまで俺達が居た、大きな道路が見える。

……もちろん人の姿は見えないけど。