「‥付き合ってないって‥今までずっと?」


理沙ちゃんが小さな声で囁いた。


「‥うん。」


「あんなにベッタリ一緒にいるのに?」


「‥うん。」


「‥ずーっと、“幼なじみ”のまま?」



「‥‥うん。」


「うん」しか言わない私の様子を見て、理沙ちゃんは頭を抱えて大きなため息をついた。


「‥重症だわ‥二人とも。プロポーズにしてはピンキーリングっておかしいとは思ったのよね‥。」


私は理沙ちゃんの顔を見ることができずに俯いた。


「ハルちゃん。二人の間に何があるのかわからないけど‥”幼なじみの壁“を乗り越えなきゃ。“プルメリア”に込めた慶太の気持ち、信じてあげてね?」


私は黙って頷いた。


いつの間にか冷たくなっていたブラックコーヒーは、いつもより少し苦く感じたけど‥私の心は少し温かくなった気がした。