30分くらいで竜は戻ってきた。あたしは事務所の窓から覗いていた。

竜はあたしを探しているみたい。携帯が鳴ってあたしは外に出た。

竜の後ろに若い男の子がいた。

モデルみたいに背が高い顔立ちが整っている。


「この子俺の甥で洋人っつうんだ。姉貴から預かってんの。東京見物連れてってよ、よろしく。」

「え、エ~!!竜の甥?かっこいいね。モデルさんかと思っちゃった。」

「美緒さんのこと竜から聞いてます。」

甥っ子は真面目そうな口調で、好感がもてた。


「年も美緒と変わんねえし、暇な者同士仲良くやってよ。本当は俺が一緒にいるはずが、仕事入っちゃって。」


竜は頭をかきながら笑った。

「かっこいいんだけど、ウブな奴で。20年彼女もいないし。」

と、竜は言ってるけど。
全然信用できない、洋人君はさわやかな笑顔。こんなかっこよくて周りの女の子たちがほっとかないだろうな…。

「洋人君、よろしくね。あたしなんかでいいの?」

「はい、是非お願いします。美緒さんがいいんです。」

洋人君は初々しさ満開でルックスとのギャップに驚いた。
見た目は女慣れしてそう。白っぽいシャツにジーンズ、スニーカー。全体的にルーズなゆるい感じ。身長があるからルーズもオシャレにみえる、のかなぁ。
なにしろ佇まいが様になってる。

あたしたちは3人でそのまま近くのカフェに入った。

「どこから来たの?」

「埼玉の秩父です。」


洋人君の答えに目が点になった。

「結構近いね。」

あたしが言うと竜が笑い出した。

「洋人ね、美緒のファンなんだよ。美緒に会わせろってうるさくて。俺がバックバンドやってるの知ってるから。」

竜が言った。
私は素直に嬉しい。
「えー、ありがとうございます。私なんかのファンなんて希少だから。ライブも来てくれたら竜に言ってバックステージ来たらいいのに。」


「俺、そういうのやらないの。めんどくせーもん。」


「竜はチケットは取ってくれたりするんだけど。会いたいって言っても全然、いつも無視されてました。でも今回はなぜか来てもいいって言ってくれて。おまけに一緒にお茶が飲めるなんて。感激です。」