ズボッと音を立てて鎌を引き抜く。

鎌は葉弥の心臓では無く、漆黒の黒くて長い美しい髪に刺さっていた。

愛士は鎌を肩へ抱え直すと物凄い勢いで屋上へ向かって飛ぶ。

「愛士！！！！！」

裂くような声で華が呼んでも、その耳には何も届かない。

屋上に着けば葉弥を襲った男達が上から葉弥を見下ろして、笑っている。

まるで人では無く人形が落ちたみたいにだ。

彼らは何も感じないのか、人を殺そうとしたも同然なのに・・。

怒りで食いしばる歯がギリっと音を立てた。

愛士はスッと鎌を両手で持ち上げるとおもいっきり彼らに向かって振り降ろす。

次の瞬間、男達が「痛ってぇぇ」と声を上げて口々に騒ぎ出した。

屋上には、切り傷だらけの男達が血を流して呻いている。

見えない残像の刃に切られたのだ。

現世ではカマイタチと似た現象になるだろう。

男達は自分が流す血には動揺を隠せず、いきなり起きた不可解な現象にうろたえている。

その身勝手さが愛士の怒りをさらに強めていた。

「人の傷が平気なら・・、自分の傷だって平気だろ。」

その言葉が引き金のように、ざああああああああああああっと何処からともなく風が吹いた。

その瞬間、葉弥が死ぬ間際に見た時と同じように、屋上いっぱいに黒い羽が一斉に舞い上がる。

ひらひらと舞い散って美しいその漆黒の羽を、彼等は真っ青な顔をして、見つめていた。