悪魔の花嫁

12月10日

葉弥はカーテンから差し込む光で目を覚ました。
朝が来るのがこんなに憂鬱なのは初めてだ。
今までお金を脅されても、身体を怪我しても、ここまで憂鬱だった事はない。
クラスの男子全員に裸を見られたという羞恥心の中、学校に行かなければならないなんて・・・。

ゆっくりと身体を起こし、窓まで歩み寄る。
カーテンを開けると微かだった光が威力を増して葉弥の顔を照らす。
今日は晴天だ。
葉弥は目的も無く見慣れた景色を見つめた。
目の前の道ではお向かいの叔母さんが玄関をほうきで掃除し、若いお兄さんがジョギングをしている。
葉弥の手に力が入る、それに連動してカーテンが大きくしわを作った。

「葉弥ーーー?」

一階からの声に反動的に振り返った。
珍しくいつまでも降りて来ない葉弥に寮母さんが声をかけたのだ。
葉弥の心臓は恐怖に怯えるようにドキドキと大きく高鳴っている。
付く息も荒い。暑くも無いのに出る汗。
葉弥は目を閉じてゆっくりと息を付く、整えていく。
誰から見ても分からないくらい落ち着いたところで目を開けた。

「はーい」

普段と同じように明るい声で階段を降りて行った。