こちらミクモ探偵事務所3


一斉にそちらの方を向く。
そこには暑そうにうちわを振っている中年男が立っていた。

「……誰ですか?」

紘哉が不思議そうに尋ねる。
芳樹の方にも顔を向けたが、肩をすくめるだけだった。

「知らないのも当然か……名前は冬沢狸翠(ふゆさわ りすい)。今は臨時でこっちに来ている」

「はぁ……」

狸翠はかしこまったように頭を下げた。
つられて紘哉も頭を下げる。