「書いてなくても、警察に連絡したら人質が殺されるとか考えないんですか?」 「全然思わなかった」 「サスペンスとか見ないんですか?」 「見ないよ」 「……夏紀さんが心配ですね」 芳樹はため息をついた。 完全に正しい判断力を失っている。 「――まぁ、そんな責めるなって。善良な市民が連絡してくれたんだから」 開けっ放しのドアから人の声が聞こえてきた。