嵐が過ぎ去ったようにしんと静まる部屋。 台風で飛ばされている新聞紙の如く、事件は急に舞い込んできた。 「……だから言ったろ?事件は起きるって」 「やっぱり探偵の勘ってやつか?」 「そうそう。意外と当たるんだよね」 芳樹はため息をつくと、玄関の鍵を閉めた。 「誘拐か……」 ボソッと呟いてみる。 知り合いでも何でもないが、夏紀の安否が気になる。 受験勉強どころではない。 紘哉はデスクに近寄ると、開きっぱなしだった参考書とノートを閉じた。