「だから呼んだんだよ。君の推理力と、その炯眼を見込んで」 彼は、孫紗江の本を紘哉に手渡す。 貰った方の紘哉は、呆然と彼を見つめた。 「……もしかして、既に事件に巻き込まれてる?」 「いいや。まだ巻き込まれてない」 「じゃあ、何でそんな事件に遭遇する前提で話を進めるんだよ?」 「……探偵の勘だよ。この夏休み、必ず一回はトラブルが舞い込んでくる」 前途多難。 紘哉は顔をしかめた。