紗季は拳を握り締めたまま、仁王立ちをしていた。 「……でたよ、理系女子」 思わず紘哉と恵一の声が揃う。 その言葉を聞いた瞬間、紗季の眉毛がつり上がった。 「何が一夏のアバンチュールよ。そんな事言ってると、大学落ちるよ?」 「言っておくが、俺はアバンチュールなどと言う単語を発した覚えは無いぞ。言い出したのはケイだ」 紘哉は恵一を指差しながら、口をへの字に曲げる。 指を差された本人は、ポカンとした顔をしていた。