「......穴に入りたい」

「いきなりどうした!?」

部屋の隅でうずくまっていた奏は頭を抱えたままそんなことをつぶやいた。

穴に入りたいって...一体何があったんだ。

「今までの行動振り返ってたら死にたくなってきた...!!!」

「あ...うん。でも過ぎたことだから気にすんな...」

「こういうのがのちのち振り返った時に黒歴史になるんだよね...」

黒歴史か...。昔は「かっこいい」とか思ってやったことも数年後思い返すと気色悪かったりするんだよな...。

考えていたらうっすらと自分の過去を思い出して俺の気分も沈んできた。

「じゃ、私たちは奏ちゃんの家に泊まるわねー。今日は仲良く二人で一夜を過ごしなさい」

「奏、頑張るのよ!! もちろん翔真くんもね!!」

一体何を頑張れというのか。そして母よ、お前はそろそろ家に戻って来い。他人に迷惑をかけるでない。

母親ふたりは一瞬で家から出ていく。


「奏、落ち込むな。人間そういうときもある」

「うん...ごめんね、迷惑かけて」

「いや、気にしてないから」

なんで交際し始めて初めての会話がこれなんだろう...。