「く…っはぁ」
ダッシュで魔の手から逃げた俺は玄関で腰を下ろしてしまった。息が上がっている。
え? 魔の手ってなんだって?
瀬野さんと焔に決まっているじゃないか。
興奮した瀬野さんと、俺を陥れようとしている焔はふたりして追いかけていた。
これがまた、息ぴったりで…。
挟み撃ちにされたり…。
上から焔が落ちてきたり。
まさか、人生の中で自分の真上に人が落ちてくるとは思わなかった。
正確には目の前だが。
ものすごく怖かった…。
俺の膝が少し震えている。ふ…これが恐怖か。
「夕飯でも考えて落ち着くか…」
俺は冷蔵庫の中身を確認するべく、台所へ向かった。
食材がなければ食材を買いに行かねば…。