「ふ、栄誉って何だよ。
俺はあんたたちメトロポリスの人間みたいに貴族の子息じゃないからな、名前が有名になろうがなるまいが、そんなの興味なくて当然だろ?
それに、日本人の立身出世願望は美徳と言うより社会構造が与えるプレッシャーなんだよ。
同期の奴らは出世したのに自分だけ取り残されるとひどく生きづらい、そんな環境への恐れや脅迫観念のなす技なわけ。
生活に余裕がある連中が求める様な権威とは大分違う。
だから、代表生なんかになっても面倒な仕事が増える上に、並以上だと認定されれば妬まれたりろくな事にならないし、俺に言わせればどこに喜ぶ要素があるんだかって感じだよ。」


と冗談混じりに顔をしかめて見せる。


「強迫観念ですか。
それなら、やはり貴族も似た様な物だと思いますよ。
権威を伴わない権力は崩壊へ向かう他ありませんから栄誉を得る事は貴族にとって長い目で見れば死活問題と言えるんです。
ああ、なるほど僕にはその感覚が無意識に染み着いていたみたいですね。
なんて、話がだいぶつまらない方にそれてしまいました。」


と美少年は軽く額を押さえてから、また綺麗すぎる笑みをこちらが戸惑うほど満面に浮かべた。