「いいえ、ただお話してみたかっただけですよ。
代表生の中でまだ面識がないのは天野君だけでしたし。
それに僕はわりとミーハーなので単純に話題の人に興味があるって言うのもありまして。」


乗り気でない俺の態度をくみ取ったのか、こんどはいたずらっぽく笑って見せる。


「へえ、社交的なんだな。
でも、ミーハーってのは何だ?
名前が張り出されてたから軽く有名人みたいだけど、それ言うなら1位だったあんたの方が断然だろ?」


笑顔を崩さず優雅な手つきで俺の前にコーヒーカップを置く彼は、小さな円テーブルを挟み機嫌良く向かいに腰掛ける。


「あはは、自覚ゼロですか。
今は僕なんかより天野君の方が断然話題ですよ。
まあ、まだほとんど顔が知られていないでしょうから、実感がないのも頷けますけど。」


受け取ったコーヒーを一口飲む。

あ、かなり美味しい。

思わず頬が緩んだが、慌てて彼の言葉に首を傾げながら思い切り怪訝な顔をする。