コスモポリタン

「ボルダー教授、どうやら陸天野をせめる事はできぬ様じゃ。
今回のこの騒ぎの原因は我々のしおりの不備じゃよ。」


顔を上げ眼鏡を外した学園長は髪と同じく白い顎髭を触りながら席に着いたまま唖然としているボルダー教授に言う。


「合格発表を掲示で行う旨と開示の時間は書いているが、必ず見る様にとは記していない。
それに、受験生への諸連絡は原則として放送を利用するともじゃ。
つまり、掲示板を見なかったからと言って陸に批はないのじゃよ。
そして放送を入れてから10分で現れたのだから、彼はいたって優秀だと言う事よの。」


言いながらも本当に嬉しそうに彼を見つめていた学園長が、最初の落ち着いた威厳のある老人の顔に戻り私たちを見た。


「我々のミスで諸君らの貴重な時間を奪ってしもうた事、まことに申し訳なかったの。
それから陸、そこが君の席じゃよ。
主役もそろった事じゃし、そろそろ本題を始めようではないか、純一教授。」


返されたしおりを受け取り純一教授が立ち上がると、他の教授も何やら準備を始めた、