コスモポリタン

申し訳なさそうな表情を浮かべた彼が、ゆっくりと口を動かす。


「すみません。」


この場の全員がこれに続く言葉は遅刻への謝罪だと信じて疑わなかったはずだ、。


「事情が飲み込めていない様です。
遅刻とか時間を守らなかったとはどう言う意味でしょうか？
放送を聞いてすぐに来たつもりなのですが。」


予想外の言葉の衝撃に、部屋中が唖然としてぽかんと口を開ける者までいるしまつなのに、彼はまだ学園長だけを見つめている。


「君は合格発表の掲示とともに示された連絡事項を見なかったのかね？」


さすがに学園長も驚いた様子で問う。


「はい、申し訳ありませんが掲示を見ていません。」


一瞬間があった。

そして、次には学園長の笑い声が部屋中に響き出した。


「ほお、君は合格発表を見に行かなかったと言う事かね？
ほっほっほっ、これは何とも愉快。
純一教授、受験生用のしおりを見せてもらえるかの。」


少年の様に目を輝かせ始めた白髪の老人が、眼鏡を取り出して小柄で黒髪の男から受け取った紙を眺める。


部屋中の人間、さすがの陸天野も、不思議そうな顔を学園長に向けた。