コスモポリタン

ああ、陸天野はいったい何をしているのよ。

こんな晴れの舞台に遅刻だなんてあり得ないわ。

ボルダー教授ほどはっきりと顔に出していなくても、ほとんどの教授が眉間に皺をよせたり軽く指で机を弾いたりいらいらを募らせている。

初っぱなからこれでは彼の評価にひどく響くに違いないわ。

ああこんな馬鹿な事して平気なのかしら。


ラウンジで見た姿を思いだし、呆れを通り越して本気で心配になって来た。


コツ、コツ、コツ、コツ。


その時、ピリリと張りつめた室内とは対照的に落ち着き払った足音が廊下から聞こえ始めた。


「失礼します。」


開け放たれた入り口に立つ彼に一斉に向けられる室内にいた全員の視線。


足音と変わらずやはり落ち着いた声で言った後、軽く敬礼しながら目だけを動かして室内を見回す彼。


私と目があうと、少し睨んで来た気がしたけど、そんな彼にボルダー教授の凄む様な詰問が飛ぶ。


「どう言うつもりだ。」


低く原の底から出された様な声に、数人の女の子が肩を振るわせたのが横目に見えた。


「どう言うつもりとはどう言った意味ですか?」


陸天野は全く怯まず悪びれた様もなく問い返す。