「時間になりましたがどういたしますか、学園長閣下?」


がっしりした体格の怖そうな中年の男が、長い白髪の品の良い老人に小声で話しかけたけど、静かすぎる室内ではたぶん全員に聞こえた。


「うーむ、すでにお集まりいただいた皆には申し訳ないが、主役の数がたりんのではいたしかたない。
暫し待とうではないか。」


穏やかだけれど威厳のある声が応え、再び静まった室内。

けれども、それから10分が経過しても陸天野が現れる事はなかった。


時間がたつに連れ、空席を一つ抱えて並んで座る私たちの間には不安と戸惑いが、それを向かいの席から見ている教授人の間には苛立ちと怒りが顕著に現れ始めた。


「ボルダー教授、申し訳ないが放送をかけて貰えるかの。」


やがて学園長が先ほどの男に言う。

そして男は立ち上がり壁際に歩み寄り、白い壁掛け電話を操作し不機嫌な声で受話器に言った。


「陸天野、至急第1チェンバーに出頭せよ。」


受話器を戻したボルダー教授は席にはつかずに扉の前に立つ。

ドアの脇に控えていた係員は素早く扉を開き廊下をのぞいた。


それから10分ほどは怖いほど静かな時間が流れた。