「ロベルト、何か考え事かしら?」


声をかけて良い物か迷ったけれど、今まで知っていた限りどんな時も余裕のある微笑を浮かべていたロベルトの変化はほおっておけなかった。


「あ、いいえ、ちょっと緊張しているみたいです。
あはは。」


はっとした様に一瞬目を見開いた後、一気に戻るいつものスマイルがなんだか嘘くさいと思ったのは初めてだ。

そして何となく言葉を続けられなくて、少し俯くと、あっと言う間にチェンバーの扉の前に着いていた。


コの字形に配置された長机と前方に演台のある会議室。

机にはすでに7人の上位合格者が座っていて、スーツ姿の若い係員が私たちを席に案内した。

席は成績準らしく、上座に座るロベルトの隣に私も座る。


集合時間5分前になって、開いた扉からは、学園長を始め有名な教授人が列をなして現れた。

そして私たちを見回し、無言ではあるけど恭しく会釈してくださる先生方に、皆背をのばして挨拶を返す。


とても栄誉ある瞬間だけれど、ただ皆の気がかりは私の左隣の一つの空席に集中していた。


こうして間もなく、陸天野が現れないままチェンバーの壁にかけられた時計が集合時間、午後1時を示した。