「ふふ、ずいぶんドラマチックな奴なのね、陸天野は。」


切れ長で涼しげだった漆黒のあの瞳を思い出す。

目が会ったのは一瞬だったけれど、とても綺麗だったなと思う自分に眉をひそめた。


「でも、とんでもなく礼儀知らずな奴よ。
一人でいたから、ランチを一緒にとろうと同席を申し込んだら、この席に私を置き去りにして去って行ったのよ。」


そのまま、いかに彼が冷淡な声を出したかとかお皿を運ぶ手つきが妙に気取っていて嫌みだったなどと、私はあの一瞬を愚痴り続ける。


ロベルトはそれをいつも通りの優しい顔で時々笑いながら聞く。

そしてそれを見ながら一通り話すと私の気分も落ち着いて来る。


「ルーキャスタ、そろそろチェンバーに向かいましょう。」


ロベルトが言い出した時にはランチの皿は皆すでに空で、私はロベルトにエスコートされラウンジを出た。


廊下を歩きながら暫し沈黙が流れる。

普段ならこんな時、気のきいた話を饒舌に語りいつでも楽しませてくれるロベルトが口を開く気配がない。


不思議に思って歩きながらその横顔を仰ぎ見る。

整いすぎた顔の見せる無表情はどこか恐ろしかった。