「ここに座ってもよろしいかしら?
ミスター陸天野。」


向かいの席を示して声をかけると、涼しげな黒い瞳でこちらを一瞥して彼は言った。


「どうぞご自由に。
俺は移動しますから。」


いきなり予想外の冷たい声。


失礼に当たる事なんて言ったつもりはない。

何か弁解しようかと彼を見たけど、食べかけの皿を起用に運ぶ姿は振り返る事なく去って行く。


だからただ長身で細身の背中を見送る事しかできなくて、それがフロアに飾られた植物の陰に隠れると、無性に彼への苛立ちがわきあがって来た。


何なのよ、あの態度。

こんな扱いを受けた事ないわ。

ああ、意味が分からない。

何考えてるのよ。

とにかくむかつく。


「パンケーキとオレンジジュースをお願いするわ。」


注文を聞きに来たウェーターにそう言って、彼の去ったテーブルにつく。


「アイスティーとピザトーストもお願いできますか?」


柔らかな笑みを浮かべて私の向かいに座るロベルト。


「ご一緒させていただきますよ、ルーキャスタ。」


目があうと完璧すぎる笑顔でウインクしてみせる綺麗な顔。