リビングへ行くと、叔父さんと叔父さん達の娘さんの雪奈(ユキナ)お姉ちゃんがいた。
「サホちゃん、今から言う事をしっかり聞いてくれ」
叔父さんがいつになく真剣な面もちで話し始めた。
「君のお母さん。真美子(マミコ)さんが君を引き取りたいと言ってきたんだ」
ドクン…―
叔父さんの言葉に、私は一瞬声が出なくなってしまった。
「…なん、で……」
小さい頃にこの家に引き取られた私には、お母さんの記憶なんて曖昧にしかなかった。
でも確かに覚えているのは、私を殴るお母さんの顔。これだけはいくら忘れたくても忘れられない。
「サホちゃんが決めるんだ」
「えっ……」
「サホちゃんがマミコさんの所に戻りたくないんだったら、戻らなくていいのよ?」
叔母さんが心配そうな表情で私を見てきた。
正直、私はどうすればいいのか分からない。
暴力を受けていたとはいえ、お母さんはお母さん。
会いたくないと言えば嘘になる。
中学生の私にそんな重い決断なんて、出来ないよ…
「…考えさせて下さい」
私はリビングを出て自分の部屋に籠もった。

