ユウは眠らなくなった。
眠れなくなったというほうが、正しいかもしれない。
そして、マナの傍を離れなくなった。
まるで、目を離したらもう二度と会えなくなるかとでも言うように。
大丈夫だとマナが何度言っても、ユウは親の後を追う雛鳥のように離れない。
マナは不安だった。
傍にいるのがいやなのではない。
眠らないユウが、日に日にやつれていくのがわかるからだ。
だが、マナは自分がユウのために何をすればいいのか、わからなかった。
そうして、一週間が過ぎたある朝、ユウは倒れた。
「ユウ!?」
かけよったマナは、ユウの顔に手をやった。
呼吸はしている。
生きている。
「よかった、死んじゃってない…」
きっと身体が限界を訴えたのだろう。
ユウは意識を失っていた。
眠っているのだ。
マナの力ではユウをベッドまで運ぶことはできなかった。
ユウの部屋に行って枕と掛布を取ってくる。
意識を失っていても、ちっともユウは楽そうに見えなかった。
眠りが浅いのか、身体が何度も痙攣する。
白い肌は、死ぬ間際の老人を思わせた。
頭の下に枕を入れ、掛布で身体を覆う。
(ユウも、おじいちゃんみたいに…)
そう考えただけで泣きたくなる。
マナは老人に会いたかった。
彼なら、きっとユウを救けてくれるのに。
人は何度でも生まれ変わって、何度でも地上に甦るのだと、老人は言った。
「でも、そんなに待てないわ。いつになるのかも、それがおじいちゃんなのかも、わからないわよ……」
今、会いたいのだ。
戻ってきてほしいのだ。


