虚ろな眼差しは決してマナを捕らえてはいなかったが、それでも、マナは言う。
「ねえ、ユウ。おじいちゃんは言ったわ。死んでも終わりじゃないって。おじいちゃんは解放されたのよ。痛みも哀しみも苦しみもない彼方へ、みんなが待ってる場所へ、行くことができたのよ」
真摯なマナの言葉に、ユウは虚ろな眼差しをゆっくりと向け始める。
「おじいちゃんはいるの。あたしたちがいつか死んだら行ける場所で、待ってる。あたしたちは、そこでまた会えるの」
「また、会える――?」
「ええ。会えるわ」
「――そこには、みんながいるんだ」
「ええ、そうよ」
マナも、本当にそんな場所があるのかはわからなかった。
けれど、信じたかった。
そして何より、この目の前の傷ついた可哀相な魂を少しでも癒したかった。
「そうよ。痛みも苦しみもない場所で、みんな幸せなの」
「だから、『哀しんではいけない。哀しみが強いと、死んだ者は心安らかにはなれない。いつまでもそこにとどまり、安らぎの場所に向かえなくなる』――」
虚ろなユウの声。
「――でも、マナ。俺は 哀しいんだ」
不意に、静かな呟きがこぼれた。


