「だがそれは、僕が望んだわけじゃない。君が望んで、そう生まれたのでもないように」
冷徹とも思えるフジオミの声。
その言葉の無責任さを、彼は自覚していなかった。
そしてそれが、どれほどシイナを傷つけるのかも。
「今まで散々その恩恵に浸かってきたくせに、今更勝手なことを言わないで!!」
堪えきれずに、シイナは叫んだ。
「あなたはマナとの間に子供をつくるのよ。それがあなたの義務だわ。
私は私の義務を果たしている。あなたもあなたの義務を果たしなさい。
それができないのなら、今後私に指一本触れないで!!」
感情の高ぶりを押さえきれずに、シイナは不覚にも溢れた涙にさえ気づかなかった。
気づいたのは、フジオミが意外にも、彼女がかつて一度だけ眼にしたことのある表情を、その顔に見せたからだ。
あの、悪夢のような夜の中で――


