マナは老人の腕にぐっとしがみついた。
「おじいちゃんは好きよ。あたしに色々なこと教えてくれるもの。あたし、ここに来てよかった。そうじゃなかったら、何にも知らないまま、博士に言われるままだったかも知れないもの」
老人を見上げると、皺深い顔が静かに微笑んでいた。
「あたしね、考えてるの。まだ決められないけど、おじいちゃんの言ったこと、きちんと考えてるのよ。自分がどうしたいのか。
でも、それを決めるには、あたしまだ何も知らなすぎるの。だから、決めるためにも、もっともっといろんなことを知りたいの」
驚いたことに、少しずつ、マナは人形から脱し始めていた。
自己を確立し、学び始めている。
その成果は恐るべき速さでなされているのだが、それにつれて、マナの心には同時に不安が芽生えていく。
「どうして博士は、あたしに何も教えてくれなかったのかしら――」


