ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~


 老人はそんなマナに優しく語りかける。
「そうだなあ。とても、落ち着いていて、静かで、いつも母からはいい匂いがしていたのを憶えているよ。優しく、私をとても愛してくれた。時には厳しく、叱ってもくれた。
 一度、私が――そう、おまえさんよりもまだ小さいとき、母のいいつけを破って、夜、外に出たことがあったんだよ。幸い何事もなく戻ってきたが、そのとき初めてぶたれたんだ。そして、その後彼女は私を抱きしめて泣きだした。本当に彼女は私を愛してくれた。
 ああ。懐かしいね。本当に、とても、懐かしいよ。彼女に会いたい。話したいことがたくさんあるのに」
「いいわね。おじいちゃんには、お母さんがいて。あたしにはいないわ。あたしのお母さんて、どんな人だったのかしら。おじいちゃんのお母さんみたいに、優しい人だったのかしら」
「きっとそうだよ。子供を愛さない母親はいないからね」
「本当? みんなそうなの? あたしがおじいちゃんを好きみたいな気持ちなの?」
「そう、そして私がおまえさんとユウを思う気持ちと同じものだ」
 触れた手から感じる暖かな感情に、マナは安堵した。老人は、マナを愛してくれている。それがわかるのはとても嬉しかった。
「親が子を愛するということは、自分を愛するのと似ている。自分から分かたれた一部だから、きっと切り離して考えるのは難しいのだろう。だが、それは決してそれ以上であってはならないのだ」
「それ以上って?」
「母と息子。父と娘。彼らは最も惹かれあってはならない存在だ。何故なら彼らは最も濃い血を、その身に有しているのだから」
「ああ。つまり、〈伴侶〉としてはいけないってことなんでしょう? それに、歳も離れすぎているもの、無理があるわ」
「マナは何にでも興味をもつ。ユウ以上だ」
 老人が笑う。だが、マナは当然のように頷いた。
「だって、あたしは何も知らなかったのよ。ドームで教えてくれたことも大事だけど、それはほんの少しだわ。あたしは知りたいの。もっともっと、たくさん、いろんなことを」