「君は一度彼を殺した。また、殺すのかね」
「生きているのなら、死ぬまで、何度でも。
 彼の能力は、私達には驚異です。
 私のミスでした。あのとき、私は彼の死体を確認しなかった――」
「愛情はなかったのかね、彼に対する」
「愛情? 私に――?」
 高らかに、シイナは嗤った。
「そんなものが、今の私達の中に存在すると、本当に思っているのですか?
 傑作だわ。そんなものを持ち得ない〈完全体〉であるあなたに、言われるなんて」
 シイナは冷たく微笑った。
 本当に、美しい笑みでカタオカを見た。
「私は失敗作ですよ。そんな感情など、持ち合わせているわけがない。
 あなたでさえ持たないものを、どうして私に持てるとお思いですか?」
「シイナ――」
「あなたに、愛するということがわかるのですか? あなたとて、誰も愛さなかったくせに。
 全てを愛しているなんて、言わないでください。
 当の昔に私達から失われた感情について今更議論しても、何にもなりません」
「――君の考えていることが、私には理解できないのだ。
 私達とは違うものだからか? 君の望みはなんだ? なぜそんなに、君の意志は強い?
 どうしてそんなに、私達と違うのだ――」
「あなたはもう、理解することさえ放棄してしまった。わからないのは当然です」