「ユウは心に傷を負ったまま成長した。
 今まで一緒に暮らしてきた私達の誰も、その傷を忘れさせることはできても、癒してやることはできなかった。
 だが、マナ、私はおまえさんなら、ユウの受けた傷を癒してやれるだろうと思っとるんだよ」
「あたしが?」
「私は、ユウがおまえさんをさらってくることに反対はしたが、本気では止めなかった。
 私はユウが可愛い。ずっとその成長を見守ってきた。
 だが、私は確実にユウより先に死ぬ。
 だから、おまえさんに傍にいてやってほしいんだよ。おまえさんはユウと歳も近い。何よりユウが、一番にそれを望んでいる。
 ユウは一人で生きられる能力を持っていながら、独りでは生きられない。ユウの受けた傷は、それほど深くユウの根本を抉ったのだ」
 真摯な眼差しを、マナは戸惑いつつも受けとめた。
 老人は本気だ。
 本当に、マナがここにとどまることを望んでいる。
 だが、それはできないことだ。

 マナには使命がある。

 それはマナの存在意義に等しい。