「ねえ、あたしたち、もっといっぱい話しましょうよ。そうしてお互いをもっと知るのよ。そうすれば、きっともっと楽しくなるはずよ」
「話すって、何を話すって言うんだ?」
「何でもいいのよ。心の中までは、わからないもの。伝えたいことはきちんと言葉にしなくちゃ。
 あたし、あなたに怒られるたびに悲しくなるの。あなたがあたしを嫌いなんだって思ってしまうの。そんなのいやだわ」
「俺は、マナを嫌ったりなんか、してない。
 ただ、マナが何でも俺に決めてくれって言うのがいやなんだ。だって、何だかどうでもいいように聞こえるんだ。何もおもしろくない、何もしたくない、そんなふうに思ってるからどうでもいいって答えるんだって、思ったんだ」
 マナは慌てて首を振った。
「そうじゃないわ。どうでもいいんじゃないの。
 あたしね、今まで、自分で決めたこと、なかったの。だって、そういうことは博士がみんなやってくれたから。あたし、ドームではみんな決めてもらってたの。それが当たり前のことだったから。ずっとそうだったから。ここではユウが決めてくれると思ってたの」
「俺は、マナに自分で決めてほしいんだ。それが俺の気持ちと違ってても、同じでも、とにかく、マナの気持ちが知りたいんだ」
「わかったわ。今から、そうする。
 自分がしたいこと、行きたいところ、見たいところ、自分で決めるわ。
 それなら、ユウはもう怒らない?」
「――うん」
「よかった」
 マナはほっとしてユウから手を離した。