ユウが咄嗟に離れようとするのを、そのまましっかり逃がさない。
触れる手から流れこんでくる感情。戸惑いと、痛みによく似た切ない感情だ。
「マナ、これはずるい……」
「だって、言葉だけじゃユウの気持ちはわからないわ。ユウは全部を言ってくれないもの。それに、本当のことをいつでも言ってもくれないわ」
手を離さないマナをあきらめ、ユウは溜息をついた。
「言いたくないんじゃないんだ。
ただ、どう言っていいのかわからないだけだ――」
「ユウ……」
ユウの言葉は正直だった。
彼の感情には様々な揺れが感じられた。
「思ってることを正直に口にするのは、俺には難しい。
だって、そんな必要、今までなかったから」
マナと接するうちに、ユウも気づいていたのだ。
それまで自分と一緒にいてくれたのは大人達ばかりだったことを。
多くを語らずとも、彼らはユウの感情の機微を敏感に察してくれていた。
だが、マナは違う。
自分よりも年下の少女だ。
老人達と接してきたようにはいかないのだ。
「言わなくても、いつもみたいに通じるって思ってた。おじいちゃん達はみんな、俺が何にも言わなくても俺の言いたいことわかってくれてた。
でも、マナには俺の考えてることが通じないから、どうしていいかわからなくて、苛々してたんだ」
「ごめんなさい。あたし、自分のことばかりで、ユウの気持ち、全然考えてなかったわ。あなたも、平気なはずないのに」
「違う。俺が悪いんだ。俺が勝手に苛々して八つ当りしたんだ。わかってなかったんだ。俺が考えること、マナもわかるって勝手に思ってたんだ」
互いの中で、相手に対する戸惑いや怒り、悲しみなどの微妙な感情がとけていくのがわかる。
マナはさらに言葉を繋ぐ。