マナが目を覚ましたのは、太陽が顔を出してからだった。
 いつのまにかベッドに横たえられていたことに気づき、起き上がるとまず窓へと向かう。
 青い空に浮かぶ雲は、流れるように動いていく。
 初めて迎える朝の明るさと、熱、光の強さは、皮膚に心地よい刺激を与えてくれた。
 崩れた廃墟の群れから顔を出す巨大な樹木は濃い緑を風に揺らめかせていた。
「昨日の音は、これだったのね――」
 木々の騒めきも、昨日と違って優しく耳に届いた。
 地は足の長い草が一面覆い尽くし、風の方向を指し示し、靡いていた。
 風に揺れるたびに微妙に色を変える緑達。

「ああ なんて綺麗なのかしら…」

 これまでになく、マナは眼に見える美しさというものを実感した。
 直に見る自然の景色に、これほどまでに感じるものがあるのだということも、彼女は知らなかったのだ。