いつしか抗うのをやめ、シイナは虚ろに言葉を繋ぐ。
 マナはもう戻らない。
 深い絶望が彼女から全ての感情を奪ったかのようにからっぽだった。

「そうよ、恐かったのよ。
 もうすぐ私達は死ぬの。何も残せずに、ただ死ぬの。
 それだけのことが、どうしようもなく恐ろしかった。
 何も残せず死ぬだけなら、どうして生きているの。
 意味がないのなら、どうして生まれたの。
 あなたはいいわ。未来を残せる。その能力がある。あなたには、意味がある。
 私はどう? 女として生まれて、でも私に意味はないわ。
 何もないのよ。私に確かなものは何もない。
 それがどんなに虚しく、恐ろしく、孤独なものかはあなたにはわからない。
 私は意味が欲しかった。
 今、ここにいる意味が、生きることを許されるための意味が、欲しかった――」

「意味なら、あるよ」
 静かに身体を離したフジオミの手が、シイナの頬に触れる。

「君は、僕のために生まれた。
 僕が愛するために。
 君が必要だよ、シイナ。
 君には、意味がある――意味がある。
 僕が君を、愛しているから」

「――」