「なんてことなの……」
 シイナは茫然とマナとユウがついさっきまでいた空間を凝視していた。
「行かせてやれ。マナはもう、一人の人間として生きはじめたんだ。僕等には止められない――」
 静かなフジオミの言葉に、シイナは鋭い視線を向けた。
「何を言ってるの、気でも狂ったの!? マナは唯一の女性なのよ、彼女だけが人類を滅亡から救えるのに!!」
 シイナはフジオミの腕を払い除け、立ち上がろうとする。
 フジオミが引き止める。
「どうする気だ」
「決まってるわ。追うのよ!!」
「やめろ!! まだわからないのか、君には」
「あの子は外の世界でなんて生きられないわ!! ここが、こここそが唯一私達の生きられる場所なのよ。ここを離れて、どうやって生きていけるって言うの、あの何もない地で」
 青ざめて、いつもの平静さをなくしているシイナを、フジオミは憐れむように見つめていた。
「そう、僕等はここからどこへも行けない。ここでしか、生きられない。
 だが、どこにも行けないのは僕等だけだ。
 マナは行ける。全て捨てて、新たなものに立ち向かえる強さを、彼女は持っている」