「!!」
 自分の身体が、大きな腕に抱かれて床に倒れこむのを感じた。
 身体に響く強い衝撃。
 砕けたガラスの散らばる音。
 両手で握っていた銃が手を離れて転がる。気が遠くなりかけた。

「マナ!!」

 名を呼ぶ声に、マナが視線を向けた。
 彼女を避けるように崩れ落ちた樹脂ガラスの向こうに、ユウがいる。

「ユウ!!」

 その声に、シイナと、かばったフジオミもそちらを向く。
「マナ、ユウと行け」
「フジオミ、あなた何言ってるの!?」
 マナが振り返る。
 フジオミはマナに、もう一度告げる。
「君はもう自由になっていい。自分で判断して、自分の一番望むところに行けばいい」
 数秒、二人の視線が絡み合い、
「あたし、行くわ」
 マナは二人に背を向けて走りだした。
「駄目よ、マナ、戻って!!」
 悲鳴のようなシイナの声にも振り返らなかった。
 マナはガラスを越え、ユウの胸に飛び込んだ。
「連れていって、ユウ」
「ああ。連れてく。今度こそ、放さない」

 抱き合う二人の姿がそのまま空に融けるように見えなくなった。

 それが最後だった。