「――行かせないわ。絶対に行かせない。あなたには責任がある。人類を救う義務があるの。それは何においても優先されなければならないのよ」
 シイナは震えていた。
 銃を構えているのは彼女の方なのに、自分こそが今にも死に曝されているかのように、蒼白だった。

「裏切らないで、マナ。あなただけは、私を裏切らないで。
 あなたは違うはず。頭のいい子だもの。自分がどんな愚かな振る舞いをしているか、落ち着いて考えればすぐにわかることよ。
 そう、あなたには考える時間が必要なのよ。落ち着いて考える時間が――」

 シイナの指が再び引き金を引くその寸前に。

「やめろ!!」
「シイナ!!」

 二つの声が、同時に響いた。
 それから、彼らの両側に聳えたつ樹脂ガラスが一斉に砕けた。
 圧力に耐えきれぬように。
 瞳を閉じるその一瞬に、シイナは何もない空間からフジオミの姿が現われたのを見た。