「――」
 マナはクローン達の不意をついて走りだした。
 少しでも早く、近く、ユウの所へ行かなければ。
 背後でシイナの怒鳴る声がした。
 きっとクローンを叱咤したのだろう。
 ホールを横切り外へでる扉に向かうマナは、樹脂ガラスに区切られた区画の最短距離を駆け抜ける。

「止まりなさい、マナ!!」

 背後から銃声がした。
 振り返るマナ。
 シイナは先程まで天井に向けた銃を、構えたまま立っていた。
 今はマナに、照準をあわせて。
「博士――」
 だが、不思議と恐怖はなかった。
 シイナが自分を撃つはずがないと、確信しているのではない。
 彼女は本気だ。
 それでも、マナは平気だった。
 撃たれてもいい。
 そう思った。
 自分の思いを、どうしてもシイナにわかってもらいたかった。
「マナ、どうしたって言うの? なぜこんなことを? まさかここを出て行くつもりなの? 正気じゃないわ」
「ごめんなさい、博士。でも、あたしは行くわ。ユウと行くの。彼はあたしを連れていってくれる。どこまでも続く砂漠の果て、海を越えた世界の果てまでも」