フジオミが思ったより早く、電源は切り変わった。
 突然の暗闇に慌てはしたものの、廃墟群ですでに暗闇には慣れっこだったマナは、その隙をついて見事に管理区域の2階に入った。
 ちょうど非常階段の手前の天井にあるダクトの通気口を開け、慎重に廊下に下りる。
 階段をかけ下りるマナの姿に、二、三人のクローン達が気づいた。
 訝しげな表情で彼女を見ているが、捕まえようとはしない。
 どうやらまだ気づかれていないらしい。
 マナは彼等の横を全速力でかけ抜けた。
 ようやく一階までたどりついた。
 後は倉庫へ向かうだけでいい。

「マナ!!」

 背後で声が響いた。
 振り返ると、五、六人のクローンを従えたシイナの姿が目に映る。
「そばに来ないで!!」
 追いついたシイナは驚きを隠さない表情でマナを見ていた。
「マナ、どういうこと!? どこへ行こうって言うの!?」
「――」
 見つかってしまった。
 あとほんの少しだったのに。
 クローンがマナをシイナのもとへと連れていこうと腕を伸ばす。
 その時。

マナ!!

 駆け抜ける、強い意志。
 懐かしい、心だけに届く声。

「――ユウ、あなたなの…?」

 自分を呼ぶ声が聞こえる。
 言葉ではなく、思いが、胸に響く。
 誰よりも、誰よりも、自分だけを求める想い。

 ユウが来たのだ。