計画を実行するのに、マナには一つだけ気がかりがあった。
 ドームの見取り図はすでに把握している。
 問題はどうやって見つからずに管理区域に入り込むかだ。
 だが、それもすぐに解決した。
 天井を見上げて、気づいたのである。
 コンピュータから必要な情報を呼び出し、再度確認する。
 マナが計画を実行に移してから数十分後、フジオミがマナの部屋を訪れた。

「マナ、いるんだろう。入ってもいいかい」

 フジオミは、いくら呼んでも応えないマナに疑問を感じて、ドアを開けた。
「マナ――?」
 部屋に、彼女はいなかった。
 備え付けのバスルームからシャワーの音がする。
「マナ、話があるんだ。君が出てくるまでここで待っている。いいかい?」
 だが、応えはない。
 しばらく、フジオミは待ったが、一向にマナが出てくる気配はなかった。
「マナ」
 フジオミは、もう一度、声を大きく彼女を呼んだ。
 だが、今度も答えはない。
「マナ、いるんだろう?」
 ドアを叩くが、反応は返らない。
 何度ドアを叩いても、マナの声は聞こえない。
「大丈夫なのかマナ。開けるよ」
 ドアを開けたとたん眼前に溢れる白い湯気と熱気。
「マナ、大丈――」
 そこには、マナはおろか、誰の姿も気配もなかった。