「だが、愛しているのだよ。フジオミ、君を、そしてシイナを。私は確かに間違いを犯したが、それでも、君達を愛していたんだ」
親が子を見守る如く。
穏やかに、優しい感情で。
理解してもらえる時は、来なかったけれども。
「幸せになりなさい、フジオミ。君がこの世界の中ででも幸せになれる方法は、きっと見つかる。それを探すんだ」
「だが、僕はマナを愛せない。シイナ以外、愛せないんです。そして、マナもユウ以外を愛せない。それでは、シイナは幸せになれない」
こんな状況であっても、フジオミはまだ自分よりもシイナのことを考えていた。
常に己れのことのみを考え続けていた彼が。
本来、愛とはそういうものであったのかもしれないと、カタオカは思った。
己れのではなく、相手の幸せになるべき道を探し、それによって自身の幸福をも見いだす。
そんな愛が、かつては確かに存在していたのかもしれない。
こんな世界でなければ、きっとシイナも、フジオミも、マナも、ユウも 全ての人間が、もっと幸せであっただろう。
ありえないはずの世界を束の間思い描いて、カタオカは力なく頭を振った。


