シイナはいつにないフジオミの苦しげな眼差しに怯えたように身を強ばらせた。
「何を言っているの――」
「気づかないとでも思っていたのか。君はマナに、自分を重ねているんだ。自分にないものを、マナは全て持っているから。
そうであるはずだった自分を、マナに求めるのはよせ。あの子は、君の思うとおり動く人形じゃない。マナはもう、君にはなれない――」
強引に、シイナはフジオミの手を自分から振り払った。
「あなたの言っていることは、わけがわからない」
「なら、わかるように言おう。未来のためなんかじゃない。人類のためでもない。君は、君の望みためにマナを犠牲にしようとしているんだ。君以外の誰も、望んではいない。カタオカでさえあきらめている。マナも、僕もだ。あと五十年もすれば、僕等は確実に滅びるんだ。こんなことが、一体何になるって言うんだ」
「やめなさいフジオミ!!」
絶叫に近い叫びに、フジオミは口をつぐんだ。
「――」
シイナは、傷ついたような眼差しをしていた。
フジオミの言葉の全てを否定していながら、それをどこかで事実として受け入れてしまったような、そんな瞳を。
「…すまない」
「――あなたに、謝ってもらう必要なんか、ないわ」
シイナはそのまま踵を返し、走り去った。
フジオミは黙ってそれを見ていた。
いつも、彼女はフジオミから逃げていく。
そうして自分はおいかけることもできずに、ただ見送るだけ。
いつから二人は、こんなにも隔たってしまったのだろうか。
ずっと一緒に育ってきた。
あんなにも傍にいたのに、どうして今自分達は一人でいるのだろう。
「――」
フジオミは背中を壁に預け、自分を抱くように支えた。そうでなければ、もう立っていられない。
彼女が欲しかった。
こんなにも、苦しいほどに、彼女だけを求めている。
身体ではなく、心が。
「シイナ……」


