思わずベッドから立ち上がり、窓に駆け寄り、そのまま立ちすくむ。
 薄闇よりも濃く影を落とす巨大な闇が見える。
 それは全て前世紀の遺物だった。
 かつては繁栄を極めただろう高く聳え断つ建造物は、今は見る影もなく廃れ、錆びれ、崩れかけている。
 今いるこの部屋も、それと同じ廃墟なのだろう。
 宵の薄闇の中、聞いたことのない騒めきがひっきりなしに耳にこだまする。
 窓の端に映る、外に蠢く巨大な影。
 マナの恐怖はいよいよ高まる。
「いや…あたしを帰して。このままじゃ死んじゃう、ドームに帰して…」
「死ぬ? あんた、病気なのか?」
 訝しげにユウが問う。しゃがみこんだマナに、近づいてくる。
「いや、傍に来ないで…」
 恐怖で、マナは混乱していた。
 その眼差しを、少年は強ばったような青ざめた顔で見ていた。
「俺が恐いのか? あんたたちとは違う姿だから、恐いのか?」
「――」
「でもこの姿は、俺が望んだものじゃない」
 ユウは苦々しげに顔を歪めていたが、今のマナにはそんなことを思いやる余裕はなかった。
 その時、一枚ドアの向こうで声がした。
 ユウが振り返る。
 マナはいよいよ身を竦める。