「あなた、マナの所へ行った帰りだったんでしょう。どうだったの」
「何も」
シイナの表情が訝しげなものに変わる。
「どういうこと?」
「何もなかった。マナとは、セックスしなかったのさ」
「どうして!!」
「そんな気に、なれなかった。僕等は互いを愛してない。マナはユウを愛してる」
「恐ろしいこと言わないで。マナとユウは親子よ!?」
「だが、事実だ」
真っすぐに見つめるフジオミの瞳に、シイナはその言葉が真実であると悟った。
「なんてことなの。フジオミ、あなた、一体何をしていたの!? 一緒にいた間に、ただ黙ってそれを見ていたの!?」
怒りを露にして自分を見上げているシイナに、フジオミは深い吐息をついて答えた。
「君がどう言おうと構わないが、僕も努力はしたつもりだ。君の言うように、僕にも義務と責任がある。
だが、止められなかった。誰にも恋する気持ちは止められないよ、シイナ。どんなに強い義務をもってしてもね」
「――なんてことなの」
「まわりがどう騒いでも、マナは僕を拒み続けるだろう。君はユウとマナが親子だと言うが、それは違う。彼等は全く違う、一個の存在だ。マナは確かにユカのクローンだが、ユカじゃない。ユカの記憶さえない。彼等の間に、親子の関係は存在しないんだ。
これまでずっと、そんなものは僕等にだって存在しなかったじゃないか。なのにどうして、血が繋がっているというだけで、遺伝子がそうであるからといって、縛られなければならないんだ。
シイナ、彼等の間に子供は生まれないんだ。なら、一緒にいたっていいだろう?」


