「――僕等はどうして、こんなふうに生まれなければならなかったんだろう」
吐息のような溜め息の後、フジオミは言った。
マナはそっと目を開け、フジオミを見上げた。
「本来なら、僕等はもっと自由に、もっと楽に、生きられるはずだった。
いつから狂ってしまったんだろう。
どこからおかしくなったんだろう。
僕等はもっと優しく、誰かを愛せるはずだった――」
ゆっくりと、フジオミはマナから離れた。
「彼は、生きているかもしれない」
呟くような言葉。
「フジオミ?」
「あの後、廃墟を捜索させたが、彼の遺体はかけらも見つからなかった。僕にわかるのはここまでだ。信じるのも信じないのも、君の自由だ」
そして歩きだす。
「フジオミ、生き続けることに、何の意味があるの?」
背中に届くかすかな声に、フジオミは肩を竦めた。
部屋を出ていく彼の呟きは、ひどく虚ろに響いた。
「さあね。もしかしたらそんなものはないのかもしれない。
だって、僕等が滅んでも世界は終わらない。
きっと僕等がいなくなった後でも、世界は変わらずに美しいまま存在し続けるだろう。
あるのは、僕等だけの終わりだ。ただ、それだけだ」


