苦しかった。
愛していない女を抱くことが、こんなに苦痛だとは、フジオミは知らなかった。
そんなことにさえ気づかないほど、以前の自分は幸せだったのかと、改めて思い知る。
もしも、シイナが完全な女性であったならば、マナを待たずに自分を愛してくれたのだろうか。
そんなくだらない仮定が頭の中に浮かんだ。
「――」
マナを組み敷いたまま、フジオミは動かなかった。
動けなかった。
シイナを思うことでマナを抱こうとしたけれど、それが逆に、より一層マナとシイナは違うのだと認識させた。
抱けない。
フジオミは唇をきつく噛んだ。
シイナ以外、自分は誰も欲しくない。
マナもまた動かなかった。
ただ身体を強ばらせたまま、顔を背けていた。
フジオミはそんなマナを見て、いっそうシイナを想った。
「――そんなに、ユウが好きか」
それは自分への問いと同じだった。
きつく目を閉じて、マナは頷く。
「ユウでなければ駄目か」
マナは両手で顔を覆って、声を殺して泣き続けた。
フジオミは黙ってそれを見ていた。
マナと自分は同じだ。
互いに、愛してはならないものを愛した。
愛さなければならないはずのものを愛せなかった。
だから今、罰を受けている。


