フジオミが部屋へ入ると、マナはベッドに腰掛けたまま、空をじっと見据えていた。
「やあ、マナ」
「――」
 ゆっくりとフジオミはマナへと近づいた。
 二人の視線が絡み合う。
「僕がここへ来たことの意味を、もう君はわかっているだろう?」
 マナは答えない。
 フジオミの手が、マナの頬に触れる。
 マナは抗わなかった。
 今これから、抱こうとしている少女を前にしても、フジオミは平静だった。
 実際に行動すれば何か感じるものがあるかもしれないとかすかに期待していたのだが、それも裏切られたようだ。
 フジオミはなげやりな態度で、マナに唇を重ねようとした。
「フジオミは、あたしを好き?」
 唇が触れる寸前に、そう問われ、フジオミは身体を引いた。
 突然のマナの問いに、一瞬戸惑いはしたものの、微笑って答える。
「ああ、好きだよ」
「愛してるの?」
 鋭い口調。
「マナ――?」
 真っすぐに見据えるマナに対して、フジオミは奇妙な違和感を覚えた。
 マナであって、マナではないような、そんな違和感を。

「答えて、フジオミ。あたしを愛してる?」

 真摯な眼差し。偽りを容易く見抜いてしまいそうなほどに。