マナは意識を失ったままドームに戻った。
 高熱が続き、しばらくはシイナ以外は面会謝絶の状態だった。
 フジオミは密かにユウ達のいた廃墟群を捜索させたが、崩れて見る影のないコンクリートの残骸の下からは、いっさいの生命反応は確認されなかった。
 一体この事実をマナにどう告げればいいのか悩んだ。
 そうして、さらに三日が過ぎた。

「あら、フジオミ」

 マナのいる研究区域のメディカルセンターの前で、フジオミはシイナと鉢合わせした。
「やあ、シイナ。マナはどうだい?」
「お見舞いにきたのなら生憎ね。マナは今朝部屋へ戻ったわ」
 いつもと違い、シイナは上機嫌だった。
「マナはどこが悪かったんだ? 疲労か?」
「それもあるわね。でも、それだけじゃないわ」
「? どういうことだい?」
「女になったのよ」
「何?」
「本来なら、初潮を迎えてからしばらくは生殖能力はないの。身体がまだできあがっていないのでね。けれど、促進剤を使ってマナの女としての成長を速めたわ。検査の結果、マナは完全な女性よ。生殖能力もユカと変わらない。私の役目も終わりよ。これからはマナがあなたの正式な相手になるわ」
 瞳を輝かせ、子供のようにシイナは語る。
 フジオミは苦痛を堪えるようにそれを見ていた。
 理解はしていた。それでも、心がついていかない。

 彼女は自分を愛していない。
 彼女は、誰も愛せない。

 わかっていながら、それでも愛した。
 今、痛みを残すだけの事実をいやというほど思い知らされながら、まだフジオミはシイナを愛している自分を知っていた。

「シイナ。それが君の望みか――」

「ええ。そうよ。私はこの時をずっと待っていたのよ。
 まだ、私達は救われる。
 あなたとマナが、救うのよ」