ひっきりなしに届く不快な音が、覚醒とともに大きくなっていく。
 それはマナにとっては、紙が散らばる音に聞こえた。
 たくさんの紙が、床に落ちていく音。心の何処かで、それは違うとも思っていたが、他に思い当る音を知らなかった。
 そんな音を聞きながら、マナはゆっくりと瞳を開けた。
「――」
 始めに視界に映ったのは、薄暗い天井の壁だった。
 光の明度も彩度も、マナが今まで見たことのないものだった。

 まだ夢を見ているのかもしれない。

 そう、マナは感じた。
 何故、こんなに暗いのだろう。さっきまで、あんなにも明るかったのに。
 二、三度瞬きをしても、マナに視界の光の加減は変わらなかった。
 だが、背中にあたる、ベッドの感触が違う。
 体に触れているシーツの感触も。
 奇妙な違和感が、徐々にマナの意識を覚醒させていく。

(何かが違う)

 五感の全てが、訴えかけていた。
 マナは飛び起きた。
 そして、視界にその少年を見いだして驚く。
「――」